東京高等裁判所 昭和59年(く)218号 判決
被告人が昭和53年8月29日午後6時30分ころから翌30日午前8時ころまでの間,東京都多摩市東寺方3丁目1番地先駐車場において,山内久輝所有の普通乗用自動車1台を窃取し,また,昭和58年10月21日午前7時ころ,松戸市大金平2丁目68番地の1マンション第7松戸202号室玄関付近において,千葉県警察本部警備部警備第二課所属の司法警察員警部中村勇が捜索差押許可状に基づき同室を捜索しようとした際,右警部に対し,その腹部等に2回体当りする暴行を加えて同警部の右職務の執行を妨害した,というものであるところ,原審において,被告人及び弁護人は捜査手続に違法がある等として本件につき公訴棄却の申立をしたほか,本件は捜査機関の捏造したものである等として全面的に争い,被告人の無罪を主張していること,これまでに7回の公判期日が開かれているが,第7回公判期日に至りようやく検察官請求の証拠に対し,被告人の意見が述べられたものの,書証(甲号証)については全て不同意であって,公務執行妨害の関係で検証調書を作成した警察官1名の尋問と前記被害警察官の主尋問の一部を了したにとどまり,窃盗の関係では証拠調べが全く行われていない段階にあること,本件は窃盗事案も「火炎車」に使用する目的が窺われる等,組織的背景を有する事案であること等が認められ,これら事実によれば現段階において被告人の保釈を許可すると,原審相被告人や組織関係者らと通謀し,あるいは証人たるべき者に働きかけるなどして罪証を隠滅するおそれが大きく,被告人には刑訴法89条4号所定の事由が認められ,更に本件公判審理の経過等に照らすと,いまだ裁量によって被告人の保釈を許すのが適当であるとも認められないので,被告人に対し保釈を許した原決定は失当である。